電気防食工事
電気防食工事とは、建物の金属部分に電気を流すことで腐食を防ぐ電気工事のことです。この時、流れる電流を防食電流といいます。建築物の構造上、塗装やメッキなどで防食できない部分を補強できる大変便利な方法です。電気防食の原理や具体的な方法などについて解説します。
電気防食工事の原理
金属の腐食とは具体的にいうと、電子がイオン化して金属面から脱落することです。サビもこのような原理によって生じています。金属の電子がイオン化するのを防ぐには、金属の電位を上げたり下げたりする操作が有効です。そのようにして、イオン化をストップさせるレベルの電圧を防食電圧といいます。電位を上げるか下げるかは、金属の種類、金属が置かれている環境にもよります。電気防食工事はこのような原理を利用して施工されているのです。
電気防食工事のメリット
電気防食は塗装やメッキができないところの金属を防食できるのが大きなメリットです。たとえば、コンクリートの中の鉄芯は、わずかなヒビなどから侵入してきた空気や水でサビてしまうリスクがあります。しかし、電気防食を施せば鉄芯の腐食を防ぐことも可能です。建物の強度を向上させることができるでしょう。
電気防食工事の種類
電気防食工事には以下のようにいくつかの種類があります。
流電陽極方式
水が染み込みやすかったり、土に触れる場所にある金属を、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムなどのイオン化傾向の大きい金属につなぎます。そして、両者の電位差を利用して防食電流を流す電気防食工事です。現在の電気防食工事の主流ともいえる手法です。外部電源による電気の供給を必要としないので、あらゆる場所に設置できるのもメリットといえるでしょう。
外部電源方式
かつての電気防食工事といえば外部電源方式が主流でした。これは、水中や土中に不溶性電極を置いて、直流電源装置の(+)極をつないで、腐食しやすい金属に(-)極を接続するという方法です。そして、不溶性電極から電気を流し、金属の電位を防食電位まで下げるというやり方ですが、設置場所が限られているなどデメリットも少なくありませんでした。
電気防食工事の工程
電気防食工事は次の様な工程で施工されます。
事前調査
防食対象となる金属の表面積、配置、周囲の環境などを調査します。その上で、電極の種類、防食電流の大きさなどを検討します。仮通電試験を行い、電極の種類と防食電流の大きさを決定します。
土木工事
電極設置場所によっては掘削などの土木工事が必要です。
電極の設置
設計書に基づいて電極を設置します。電気防食電源盤がある場合には配線も行います。
完成測定
電気防食工事が完成したら防食効果を測定します。さらに、消防署完成検査時にも立ち合い測定を行います。
完成後の管理
電気防食工事は完成後の管理も重要です。なぜならば、防食電位、防食電流は変動することが予測されるからです。防食不足や過防食になるのを回避するためにも、1年に1回以上の点検調節は欠かせません。